浦和地方裁判所 平成6年(わ)291号 判決
一
被告人
1 商号
株式会社竹ケ原
本店所在地
東京都中野区弥生町二丁目四六番八号
代表者
竹ケ原馨
2 本籍
青森県十和田市大字相坂字長漕一四番地一
住居
埼玉県川口市芝二丁目四番三〇号
職業
会社役員
氏名
竹ケ原馨
生年月日
昭和二六年九月二二日生
一 罪名
法人税法違反
一 裁判所
浦和地方裁判所第三刑事部
一 裁判官
小池洋吉
一 出席検察官
佐藤隆文
一 宣告の日
平成六年七月六日
判決主文
被告会社株式会社竹ケ原を罰金三〇〇〇万円に、被告人竹ケ原馨を懲役一年に処する。
この裁判確定の日から三年間被告人竹ケ原馨に対する右懲役刑の執行を猶予する。
一 罪となるべき事実の要旨
被告人株式会社竹ケ原は、昭和六三年一二月二三日から平成四年二月二九日まで、埼玉県戸田市早瀬一丁目三番一九号に本店を置き(平成四年三月一日、東京都中野区弥生町二丁目四六番八号に本店移転)、型枠大工工事業を営んでいる資本金三〇〇万円の会社であり、被告人竹ケ原馨は、被告人会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、被告人竹ケ原馨は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、外注費を架空計上するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が五六八六万八七〇円であったのに、平成二年五月二九日、埼玉県川口市西川口四丁目六番一八号所在の所轄西川口税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三七〇万一四五円でこれに対する法人税額が四五八万九六〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二一八五万三六〇〇円と右申告税額との差額一七二六万四〇〇〇円を免れた
第二 平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二億八〇六〇万四八六一円であったのに、平成三年五月三一日、前記西川口税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二六五七万三三七〇円でこれに対する法人税額が九二〇万四八〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一億四四六万六五〇〇円と右申告税額との差額九五二六万一七〇〇円を免れた
ものである。
一 適用した罰条
被告会社株式竹ケ原について
法人税法一五九条一項、二項、一六四条一項、刑事訴訟法一八一条一項ただし書
被告人竹ケ原馨について
法人税法一五九条一項、二項、二五条一項、刑事訴訟法一八一条一項ただし書
一 量刑の事情
本件は、被告人竹ケ原が、その経営する株式会社竹ノ原の法人税の確定申告に際し、平成元年度、同二年度の二事業年度にわたり内容虚偽の申告書を提出して合計一億一二五二万円余の法人税を免れたという法人税法違反の事案であるところ、被告人は、青森県から上京して季節労働者として雇用される立場から、型枠大工工事業を営む身となり、これを法人化して被告人会社を設立していわゆるバブル景気の好況に浴し、業績の良いときに財産を蓄えたいとの気持ちから、本件多額の脱税を行ったというもので、その動機に同情すべき点はない。その逋脱率も九割近い高率であるうえ、犯行態様を見ても、外注加工費を水増しするべく、架空の領収書、伝票等を作成し、賄費収入に関し、徴収した宿舎費、食費等の一部を除外するなどし、また、仮名の預金口座を開設するなど積極的かつ巧妙であるから、犯情も悪質と言わなければならない。かかる犯行が横行するときは、国家財政を危殆に瀕せしめる恐れがあるとともに、国民の納税意欲を減退せしめ、ひいてその規範意識を揺るがして国家の存立をも脅かしかねない恐れがあるから、被告人、被告人会社の刑事責任には重いものがあると言うべきである。
しかしながら、他方、被告人は本件事実を素直に認めて反省の情を示していること、被告人会社では本件後被告人のワンマン経営を改めて経理の陣容を整えるとともに定期的に税理士のチェックを受けるなどの再発防止策を講じて経理の健全化を図っていること、被告人が出稼ぎ人から身を起こし多数作業員を使用する会社の経営者として身を立てたことは被告人の努力の結果として評価すべきであること、被告人会社は、本件が新聞等で報道され、また、本件後修正申告が行われ、本税分の支払のほか、延滞税・重加算税分計五四二九万円余りの支払も既に了したことが認められるから、これらにより被告人会社は実質的な社会的制裁を受けたともいえること、被告人には前科が全くないことなど被告人及び被告人会社に有利ないし酌むべき事情も認められるので、以上一切の情状を勘案して、被告人及び被告人会社に対し主文掲記の刑を量定したうえ、被告人に対しては、社会内における更生の機会を与えるを相当と思料し、その刑の執行を猶予することとした次第である。
(裁判官 小池洋吉)